映画「フライト」

映画「フライト」 ~ストーリー前半~

飛行機って理論上はなんで浮いているのかが分かっていないんですって。重さをこれくらいにして、翼をこれくらいの大きさにして、これくらいのスピードで走って、高度をこれくらいに保つと飛ぶ、ということは分かっているので安全なのですが、「この形だと浮く理由」というのは今も研究中なのだそうです。科学って難しいですね。それでも毎日世界中で飛行機は飛んでいるわけですが、100%安全というわけではありません。あってはならないことであり、滅多にないことですが、時には整備不良で墜落したり、乱気流に巻き込まれて胴体着陸したりといったことも稀に聞かれます。そういった危機を機長の機転で乗り切ったという話もたまに聞きますよね。常識ではありえない方法で乗客を救ったパイロットは、大抵英雄として扱われます。この映画「フライト」も、トラブルに冷静に対処し、全員死んでいたかもしれないフライトで乗客乗員を救ったパイロットのお話です。予想外の展開に目が離せなること必須!ハラハラドキドキのとてもスリリングな映画です。


予告・あらすじとの違い

まずこの映画について最初に言いたいのは、事前に流れていた予告編やサイトのあらすじがミスリードだということです。予告を見る限りでは機体の不備で制御不能となった航空機を、ベテランパイロットの凄腕で無事着陸させた。しかし、彼の血液からはアルコールが検出されてしまう。事故の原因は?パイロットは英雄か否か・・・みたいな内容になっているのですが、これが序盤から裏切られます。私は弁護士と聴聞委員会が情報戦・心理戦を繰り広げるサスペンスドラマを期待して観に行ったので、結構度肝を抜かれました。そういった意味でもこの映画は目が離せない映画だと思います。以下はネタバレになりますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。


登場人物とキャスト

ウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)
・・・事故機の機長。元・アメリカ海軍パイロット。アルコール依存症で、それが原因で妻と離婚し、一人息子からも嫌われている。
ヒュー・ラング(ドン・チードル)
・・・パイロット組合がウィトカーの飲酒をもみ消すために雇った敏腕弁護士。
ニコール・マッゲン(ケリー・ライリー)
・・・薬物依存症の女性。ウィトカーとは入院先で出会い、親しくなる。
ハーリン・メイズ(ジョン・グッドマン)
・・・ウィトカーの親友でドラッグの売人。登場時にはザ・ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」が流れる。
チャーリー・アンダーソン(ブルース・グリーンウッド)
・・・パイロット組合の代表。ウィトカーとは古くからの友人で、海軍時代には同じ部隊に所属していた。現在はパイロットを引退している。
エレン・ブロック(メリッサ・レオ)
・・・運輸安全委員会調査班のリーダー。ウィトカーをじわじわと追い詰める。
ケン・エヴァンス(ブライアン・ジェラティ)
・・・事故機の副操縦士。ウィトカーとは今回のフライトで初めて組んだ。敬虔なクリスチャン。
マーガレット・トマソン(タマラ・チュニー)
・・・事故機の客室乗務員。ウィトカーとは古くからの付き合いで、彼のアルコール依存症には薄々感づいている。
カテリーナ・“トリーナ”・マルケス(ナディーン・ベラスケス)
・・・事故機の客室乗務員。ウィトカーの恋人。乗客の子供を守ろうとして事故の犠牲になった。
男性患者(ジェームズ・バッジ・デール)
・・・ウィトカーとニコールが入院先の病院で出会ったガン患者。ガンの治療のために頭髪が無くなっている。
ディアナ(ガーセル・ボヴェイ)
・・・ウィトカーの元妻。

ストーリー(前半)

背面飛行と墜落

オーランドからアトランタに向かって1つの航空機が飛んだ。機長はベテランのウィップ・ウィトカー。彼はアルコール依存症で、フライトの直前まで客室乗務員で恋人のトリーナとセックスと飲酒に興じ、前の晩にはほとんど眠らずにその眠気をコカインで覚ましていた。別れた妻からの養育費を催促する電話でイライラしていた気分も、コカインで吹き飛ばすのだった。副機長のケン・エヴァンスは、そんなウィトカーにいぶかしげな視線を送る。それもそのはず。今日のオーランドの天候は最悪で、乗員も乗客も少なからず不安を抱えていたのだ。しかしウィトカーは不安など欠片もない様子。離陸直後に乱気流に巻き込まれても、冷静に、そして的確に対処し、無事機体を安定させたのだった。ウィトカーは自ら乗客の前にたち、天候不良のため飲み物の提供は出来ないが、機体は安定したのでもう心配はないと演説する。そして自分用のオレンジジュースにウォッカを混ぜ込み、飲み干すのだった。ウィトカーを信頼しかけたエヴァンスだったが、自動操縦に切り替えた途端にいびきをかいて眠る機長の様子に心底呆れてしまう。ウィトカーを古くから知る客室乗務員のマーガレットは、「いつもこうなのよ」と苦笑いだ。そんなウィトカーを眠りから覚ましたのは、突如機体を襲った衝撃だった。安定していたはずの機体が、突然急降下を始めたのだ。エヴァンスは必死に機首を持ち上げようとするが機体は制御不能。乗員も乗客もパニックに陥るなか、ウィトカーは妙に冷静だ。クルーたちには乗客にシートベルトを着用させるように指示し、なんとかして機体を安定させようと試みる。昇降舵は動かない、油圧装置も故障してしまっている。ウィトカーは車輪を出してエアブレーキを作動させ、機体を軽くするために燃料を捨てる。空域を確保し、マーガレットに手伝ってもらって自動操縦を手動に戻すウィトカー。このままでは住宅街に突っ込んでしまうと考えた彼は、機体を180度回転させ、背面飛行で広い草原を目指す。機体が回転した際に、シートベルトをきちんと締めていなかった子供が座席から落ちてしまう。それを見たトリーナは自身のシートベルトを外して子供を助けに行くのだった。ウィトカーとエヴァンスは再びマーガレットの力を借りて背面飛行していた機体を元に戻す。機体はその翼で草原に立つ教会の塔を破壊し、胴体着陸した・・・。

英雄・ウィトカー

ウィトカーが目を覚ますと、そこは病院だった。幸いなことに軽傷で済んだウィトカーの元に、旧友でありパイロット組合の代表のチャーリー・アンダーソンが見舞いにやってくる。チャーリーは、乗客乗員102名のうち、96名が生還したことを伝え、あれだけの事故で生存者がいたことは奇跡だとウィトカーを讃えるのだった。犠牲者は4名が乗客、2名が乗務員だと聞かされる。「誰が死んだんだ」と聞くウィトカーにチャーリーは、事故の件は国家運輸安全委員会(NTSB)が話すから、とはぐらかすのだった。NTSBの面々がウィトカーの病室を訪れ、死んだ乗務員の一人にトリーナが含まれることを話した。彼女は子供を助けようとして犠牲になったこと、子供は助かったことなどを聞いてウィトカーは声も上げずに涙するのんだった。翌日、ウィトカーの病室に彼の親友ハーリン・メイズが訪ねてくる。煙草に酒にポルノ雑誌といった見舞い品を渡し、ハーリンはウィトカーの英雄ぶりが世間で話題になっていると騒ぐ。自宅前にも病院にも報道陣が山のようにいる、と。そんなことを聞いてもウィトカーの心は晴れないのだった。夜になるとウィトカーはこっそり病室を抜け出して、ハーリンから貰った煙草を吸いに行く。ウィトカーが喫煙場所に選んだ階段の踊り場には既に先客がいた。薬物依存で入院中の女性ニコールだった。ニコールはウィトカーに、あの飛行機に乗っていたのかと聞く。ウィトカーは咄嗟に乗客だったふりをする。2人は意気投合し、お互いに退院したらまた会おうと約束するのだった。と、そこへガリガリにやせ細った男がやってくる。ウィトカーのタバコを1本もらった男性は、ニコールが薬物依存であること、ウィトカーがあの飛行機の機長であることを当てる。男は「死は洞察力を与えるんだ」とにこやかに笑う。彼はガンの治療中で、そう先が長くないことを悟っているのだった。

酒への依存

翌朝、退院したウィトカーはハーリンの計らいでマスコミの目から逃れて療養するため、父が経営していた農場の家へと逃げる。麻薬のディーラーでもあるハーリンは、ウィトカーにコカインを進めるが、ウィトカーはそれを断る。そればかりか家中に隠してあった酒を次々に捨て、「酒はやめた」と宣言するのだった。ウィトカーの元に1本の電話が入る。チャーリーからだ。チャーリーに呼び出されて向かった先には、弁護士のヒュー・ラングが同席していた。彼は過失犯専門の弁護士だと紹介される。チャーリーとヒューは、ウィトカーの血液からアルコールとコカインが検出されたことを伝える。ウィトカーは、確かに酒は飲んでいたが、事故の原因は機体にあると主張するのだった。しかしヒューは、6人の死者が出ている以上、飲酒して操縦していたことが判れば終身刑になってしまうことを伝える。そしてこのことをもみ消すことも出来ると。そしてそれは航空会社にとっても非常に大きな問題であることを示唆する。パイロットが飲酒しドラッグにおぼれた状態で操縦していたと分かったら、例え事故の原因が機体にあったとしても、そしていくら英雄と言われているウィトカーであっても非難されることは目に見えていた。ウィトカーはヒューとチャーリーを残して席を立つ。帰り際、ホテルのバーでオレンジジュースを頼むウィトカー。「他に何か?」と聞くウェイターに、ダブルのウォッカを頼み、一気に飲み干してしまうのだった。

ニコールとの再会

車で農場へと帰る途中、ウィトカーはマーケットでビールを買ってしまう。缶ビールを片手に荒々しい運転をするウィトカー。気が付くと、以前病院で出会ったニコールの家の近くにやってきていた。ニコールに聞いた住所を頼りに辺りを探すと、ちょうど大家と家賃の支払いでもめているニコールに出会う。家賃を滞納しているニコールは、アパートから追い出されるところだった。ウィトカーはニコールが滞納した家賃を肩代わりし、追い出されたのなら自分の農場に住めばいいと彼女を連れ込むのだった。ニコールと良い仲になったウィトカーだったが、酒は止められていなかった。ニコールと共に参加した「アルコール依存症の会」では、アルコール中毒であるかと問われ、手を挙げることができない。ある参加者が話し始める。「僕の人生はウソで塗り固められていた。ウソつきはこの場にはいられない」と。ウィトカーはそっと、その場から逃げ出すのだった。後日、トリーナの葬儀が行われた。ウィトカーはそこでマーガレットに出会う。彼女は顔に大きな傷を負っていたが、それ以外は元気そうだ。ウィトカーはあの日、自分がいつもと同じ様子だった、酒は飲んでいなかったと証言してほしいとマーガレットに頼む。マーガレットは涙ながらに、「嘘はつけない。もうやめよう」と訴えるのだった。呆然とするウィトカーの元に、マーガレットの幼い息子が駆け寄ってくる。マーガレットの息子は「母の命を救ってくれてありがとう」とウィトカーに礼を言うのだった。